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2017-12-19

【主婦のNYひとり旅行記・第5回】摩天楼の小さな物語

神様は残酷だ。

人ごみが苦手な私に
ブラックフライデーを当てて来なくてももいいじゃないか

いや、朝の時点では意気揚々と死人の出るアメリカ一大セールに
鼻息を荒くしていた私がいた





これは
世の中の雰囲気に流され自分を見失い
根暗な性格が相まったくだらない物語である








ブラックフライデーの前夜、すでに滞在は後半に差し掛かったところで
調子に乗ってホテル併設のスポーツバーにてハンバーガーを食べた

私的にはハンバーガーはかなり調子に乗っている

ハンバーガーが食べたいと思うのは年に1、2度。

ハンバーガーが食べたい気分にはなるんだけど、実際は見ただけでお腹いっぱいになってしまう

しかも
ルールのわからないアメフトを見ながらビール。
さらにビール、カクテル、カクテルで4杯飲んだ


おかげさまでウエイトレスのメキシカンのおばさんに40ドルぼられそうになった
12ドルのカクテルを雑に頼んでいる私を見て馬鹿にしたのだろう




渡航前
コーヒー1杯をカードで支払うアメリカで
現金はチップくらいでしか使わないだろうと
ほとんど持っていなかった

実際あまり使わず、財布には滞在後半では使い切らないほどの現金が残った

ということもあり、手持ちの現金でスポーツバーの支払いをした





が、朝になって財布に10ドルしかない事に気がつく
さすがに10ドルはまずい
日本円で千円弱。


まぁATMでおろすか、円をドルに両替すればいいだろう
(円はまだ現金で持っていた)

すぐさま昨日のスポーツバーに置いてあるATMにクレジットカードを入れて
現金を降ろそうとする


何度やっても現金が出てこない


しかも最後まで進み、「Thank you!」の文字にたどり着いて

も、現金が出てこない


昨日のぼられそうになった事を思い出す

「やべー。このATM詐欺かもしれない」




黒い感情が渦巻く



現時点の問題点が3つ
①今日は最終日ブラックフライデー、買い物したい(焦り)
②現金がない(不安)
③ATMに騙された(疑い)


胸いっぱいに黒い感情が渦巻く




が、
私は大人、このくらいの問題で平常心を失うわけにはいかない
冷静に、冷静に。




【問題①】
問題②と③を解決しつつブラブラと物色しとけばいい
欲しいものがあれば後ほど買いに戻ろう


【問題②】
SOHOへ出て両替所に行けばいい


【問題③】
渡米前にクレジット会社に教えてもらった緊急連絡先に公衆電話から連絡すればいい



そう筋道を立てていざセール会場のSOHOへ向かった

到着
午前10時。すでにお祭り騒ぎ。三社祭状態である



まずは両替所を探す

15年前には至る所に両替所があった。
銀行でも郵便局でも両替が出来たので、何の問題もなくクリアできると思っていたが
全く両替所が見当たらない

SOHOなのに?買い物の街なのに?

気持ちを立て直して同時に公衆電話を探す

15年前には至る所に公衆電話があった。
これだけ携帯電話が普及したので少ないだろうとは思ったが、こちらは案外すぐに見つかった
こ、こ、壊れてる。。。。
4台目、ついに通話できそうな電話にありつくも、かけ方がわからない

お金を入れてもすぐに出てきてしまう

公衆電話もかけられない自分に悲しさを覚える

すぐにスマホで「アメリカ 公衆電話 かけ方」を検索
どうにかトゥルルルル~にありつくもなかなか出ない

すでに街はごった返している
その熱気に包まれ、私の「セールしなきゃ!」心も爆発寸前!


「はいこちらアメックスです」

よかった、つながった。

ATMでのやり取りを伝え、履歴を調べて欲しいと伝えるも
「アメックスではATMによる現金の引き下ろしができませんので大丈夫ですよ。履歴に残っておりません」


なんだよ。


でもよかった。問題③クリアである。




「ちなみに、今SOHOにいるんですが、近くで円をドルに両替できる場所を知りませんか?」

「お待ちください。。。。。。チェイス銀行がチャイナタウンにございますのでそちらで両替が可能なようです」
「そうですか!ありがとうございました!」

チャイナタウンはここから歩いて800m
昼食がてら両替して問題②もクリア。午後からセールに勤しむとするか!

少しホッとしてOPENING CEREMONYTHE NORTH FACENIKEを横目に一旦SOHOを離脱
当時スケーターの子が紹介してくれた元Supremeの店員でAKIRAくん
(今はamっていうブランドをやってるみたい)もさっき見かけたから
戻って話しかけてみよう。
(私のことは微塵も覚えていないだろうが面白ネタを聞けるかもしれないし)

そんな微かなときめきを抱えつつチャイナタウンのチェイス銀行へ


「すみません。両替したいんですけど」

「申し訳ありませんがカスタマーオンリーなんです」

「そうですか。」


おい。話が違うぞ。

面倒くさがられたか?


こうなったら隣の銀行にも聞いてみよう
「すみません。」

「カスタマーオンリーだよ」
「カスタマーだけ」
「カスタマーだけアルヨ」
「カスタマーだけや!お前に食わせるタンメンはねぇ!」




全滅である




そんなこんなで問題②と①をクリアできないまま4時間が経過




何も買ってないのにすでにぐったりである




フォーを食べた後、仕方なくSOHOへ舞い戻る


クレジットカードで買い物することもできたが
問題をクリアしないと気持ち悪い性格と
思考がすでに停止しつつあった私は
現金を両替することだけに固執し
さらには
最終日のNYを半日無駄にしたのではないかと言う気持ちから
鉛のように重たい足と心を引きずり
歩き続けた



SOHOは相変わらずごった返している

馬鹿みたいに買い物しまくっている中国人キッズ(大学生。相当の金持ち)に
白目を向けて歩き続ける


すると
先ほどとは違うチェイス銀行が現れた


「ここがダメだったらもう諦めよう」
(とっくに諦めればよかったんじゃね?)


幽霊のように魂の抜けた私がチェイス銀行の門をたたく


「名愛屁流譜YOU?」もはや英語が漢字に聞こえてきた




顔を上げると
さっきのチャイナタウンとは打って変わって
ジェイミー・フォックス似のスラッと背の高いハンサムな受付係り



「あのー、円をドルに両替ししししし。。。。。」

「カスタマーならできるけど、あなた会員じゃないよね?」

「えぇ私は観光客で会員じゃないの。。。。。。両替できない?」



NONONONO~ゴニョゴニョごにょごにょ(ニコニコ)」




「え?なんて?ちょちょっちょっと待って、翻訳アプリでお願いしてもいい?」


「シュア!」


ジェイミー・フォックス似の彼がグーグル翻訳アプリで英語を打つも、うまくいかない


「じゃあ音声でお願いしてもいい?」

と、マイクをジェイミー・フォックスに向ける

OKと笑顔で快諾。なにやら私のスマホに話しかけている


私には

「オーシット!シット!」

しか聞き取れなかったけど
何度も何度も手こずりながらも日本語に変換してくれた
何だか少し楽しんでいるようにも見えた

納得いく音声認識が入ったようでその翻訳を私に差し出した


「あなたは他の方法でできないことはないでしょう」


「え!本当!」


何だか変な日本語ではあったが、ジェイミー・フォックスが言っていることは理解できた
それから「近くの別の支店で両替できる」とわかり
住所を打ってもらって颯爽と銀行を出た


これで解決!
ありがとう!と強めに握手をして別支店へ向かう



グーグルマップだとここから600m

チェイス銀行と看板もでかでかと出てるだろうし
すぐに見つかるはずだった


これがクリアできれば
残りは問題①のみ。
買い物を楽しむだけだ


時計の針はすでに午後5時に差し掛かり
かれこれ半日以上同じエリアをぐるぐると無駄に歩き続けている


頭の中ではお笑い芸人カミナの「ばかこのー!」が自分自身にこだましている



地図だとこのあたりだろう

こっちかな?

いやあっちのブロックかな?

もしかしてあいつ住所打ち間違えたか?



見当たらない



近所の店員にも場所を聞いたが見事に不親切なやつばかりで
「あっちの方だよ」とか「知らない」とかしか言ってくれない

そりゃそうだよな
37の英語のしゃべれない客じゃないおばさんに
道を教えるほどみんな暇じゃない
しかも今日はブラックフライデーなんだから。


もうだめだ

もう限界だ

もうおしまいだ


もう泣いちゃう

おばちゃんだけど泣いちゃう

年甲斐もなく泣いちゃう

おしっこしたい




もう
両替所は忘れよう


もう彼のことは忘れよう


もうこの恋はおしまいだ
(もはや意味不明)





「攻略しないと気が済まない」
全てはこの性格がいけないのだ


なぜ途中で諦めなかったんだ、何を頑張っているんだ

私は何をしているのだ!バカこのーーーー!!!









看板[両替所]


!!!



偶然にもこんなところに両替所が。


ジーザス!おおジーザス!
神様は私を見捨てなかった
ありがとう神さま仏さまぁぁっぁぁぁ!!!





メキシカンの運営する
パチンコの景品交換所みたいな両替所で
何事もなかったように無事両替完了。


午後6時半










いや待てよ








この両替所ってさぁ
ジェイミー・フォックスが教えてくれてた場所なんじゃないの?

ジェイミー・フォックス、チェイス銀行の別支店を教えてくれてたんじゃなくて
この両替所を教えてくれてたんじゃないの?
(みなさんはとっくにお気づきですよね)



もしかして、ものすごく親切にしてくれたんじゃないの?
人助けしてくれたんじゃないの?
(なんで最初に気がつかないの?)


彼の親切に気がついた私は
彼の元へにダッシュし始めており
私の両目からは大粒の汗が次々と流れてた
(ソフトなストーカー行為)



チェイス銀行に1分くらいで着き
扉を押そうとしたら
別の親切な店員さんがどうぞと開けてくれたけど
「ここでいいんです」と少しだけ扉を開けた状態で
ジェイミー・フォックスを探す

すでに時間は7時近い。就業時間も間もなく終わるのだろう
彼は同僚たちと楽しく談笑していた


彼が私に気がつくと
私はとびきりのビッグスマイルで親指を天高く突き上げた

そして180度近い深々としたお辞儀をしてその場を走り去った



遠くにいた彼の表情は穏やかに笑っているように見えた
実際彼がどう思っていたか本心はわからないが
私はお礼ができたからそれでいいのだ

















今日はブラックフライデー


街は深夜まで賑わっている

今から買い物しても遅くない

と、一瞬考えたが

冷静を取り戻す




買い物はもうやめよう



自分の弱点も欠点もこの1日でよくわかった




そして何より人の優しさに触れるどころか
両手で握りしめることができた






私はこのまま大好きなMoMAへ行かなければ




旅はもう直ぐ終わってしまうというのに
最後の最後に行きたい場所が残っている



今からMoMAへ行かなくちゃ




向かう地下鉄の車内で何度も
ジェイミー・フォックスの親切を思い出して
何度も目から大汗をかいた



クリスマスムードと大セールで賑わうマンハッタン


私の汗に気がつく人は誰もいない








心身ともに極限状態で鑑賞した
MoMAでの感動は計り知れない私の財産となった















バカこのーーー!!!(喜)





















※出産ちょこっとブログ第1回〜9回まで過去記事にて読めますので
ぜひお時間がありましたら暇つぶしに読んでくださいませ


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